今朝、NISAのアプリを開いて、思わず手が止まりませんでしたか。昨日は日経平均が421円も下がったのに、今日の画面には「+5%超」という数字が出ています。ホルムズ海峡の封鎖が正式に始まった、その翌日に、なぜ市場はむしろ跳ね上がったのでしょうか。「封鎖が始まったなら、悪いことじゃないの?」——その疑問が、今日この記事の出発点です。
昨日の日本市場で何が起きたのか
4月13日、封鎖の初日。日経平均は5万6430円で取引を終えました。前日より421円下がった数字です(-0.88%)。理由はひとつでした。アメリカとイランがパキスタンのイスラマバードで21時間にわたって交渉を続けたものの、合意に至らず、トランプ大統領がホルムズ海峡の封鎖を正式に宣言したからです。
ところが同じ日の夜、状況が変わり始めました。トランプ大統領が「イランは交渉を望んでいる」という言葉を口にし、ホルムズ再交渉に向けた動きが水面下で始まっているという情報が流れてきました。その瞬間、アメリカのS&P500は下落分を取り戻し、1%上昇して引けました(6886ポイント)。そして今日4月14日の朝、日本市場はその流れを受けて、日経平均が+5%を超える急騰でスタートしました。
これが自分のNISAとどう関係するのか、気になってきた方もいると思います。つながりはとても直接的です。日経平均が上がれば、日経連動のETFや日本株をNISAに入れている方の評価額が上がります。そして昨日の時点で、日本の10年長期国債(国がお金を借りるときに約束する利子の率)の利回りは2.49%まで上昇しました。1997年以来、29年ぶりの高水準です。いまの円ドルは157〜160円あたりを行き来しています。これらの数字がなぜ重要なのかは、このあと順を追って説明します。
「封鎖」とは実際にどういうものなのか

ホルムズ海峡は、イランとオマーンのあいだにある海の通り道です。もっとも幅の狭いところで34キロメートルしかありません。この細い海の道を、世界の石油供給のおよそ20%が通過しています。サウジアラビア、UAE、クウェートで生産された原油が船に積まれ、この海峡を通って日本に届きます。戦争前は1日に130隻近くが通過していたのに、いまは1日10隻前後にまで減っています。
アメリカは4月13日から、イランに通行料を払った船だけを止める「イラン港湾封鎖」を開始しました。イランと関係のない他の国の船は通してよいとしましたが、実際にはほとんどの海運会社がすでに自らこの海域を避けています。「自分の船が標的になるかもしれない」という不安からです。難しく聞こえてしまいましたか。一言でまとめると、世界の石油の5分の1が通る道が事実上ふさがれており、その状況がどちらに向かうかによって、原油価格と物価と株価が大きく変わってくる、ということです。
世界6か国は、この状況をどう見ているのか
アメリカ
アメリカの市場では、いま「TACOパターン」という言葉が広まっています。「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも土壇場で引き下がる)」の頭文字をとったものです。トランプ大統領が強硬な発言をしては土壇場で態度を変えるパターンが繰り返されてきたため、投資家たちは封鎖の発表を聞いても「どうせ交渉で落ち着く」と受け取り始めています。アメリカのエネルギー省長官は「数週間以内に原油価格が天井を打って下がっていくだろう」と発言し、それを受けて市場はさらに一歩安心しました。これがNISAの米国株にとって何を意味するのか。アメリカ株価が比較的落ち着いた動きをしているサインではありますが、TACOパターンが今回も当たるかどうかは、8日後にならないとわかりません。
ヨーロッパ
ヨーロッパはやや異なる方向に動いています。フランスのマクロン大統領が「ホルムズ海峡の航行の自由を回復するための協議を呼びかける」と表明し、イギリスも参加を宣言しました。ヨーロッパの国々は、この戦争に直接軍事介入はしないまま、外交的な解決策を探る役回りを買って出ています。エネルギーを多く輸入するヨーロッパにとっても、原油価格が上がれば製造業や生活費全般に影響が出るからです。ヨーロッパのファンドをNISAに入れている方にとっては、ヨーロッパが外交チャンネルを使って紛争の早期終結を促す方向で動いているという点が、直接つながってきます。
日本
この状況でもっとも立場が難しいのが日本です。日本はエネルギーをほぼ全量、外国から買ってこなければならない構造になっています。その原油の90%以上が中東から来ており、ほとんどがホルムズ海峡を通って届きます。原油が高くなれば電気代が上がります。電気代が上がれば工場のコストが上がり、それが食料品や日用品の値段に反映されます。昨日の長期金利が29年ぶりの高水準である2.49%をつけたのは、市場が「物価がこのまま上がり続けるなら、日本銀行は金利をさらに引き上げるだろう」と読み始めたサインです。金利が上がれば、NISAの債券型商品の価格は下がり、住宅ローンの利息も上がります。
韓国
韓国もエネルギーのほとんどを輸入に頼っているため、原油が高くなれば製造業のコストが上がります。4月13日の韓国総合株価指数(コスピ)は0.73%下落しました。一方で、韓国には造船会社や精製会社など、エネルギー危機の局面でかえって恩恵を受ける業種もあるため、国全体として見ると日本よりも影響が分散されます。NISAで韓国関連ファンドをお持ちの方は、業種の構成を一度確認してみることをお勧めします。
中国
中国は静かにこの状況を見守っています。中国も原油を大規模に輸入する国ですが、これまでイランの原油を買い続けてきました。封鎖が強まれば、このルートも遮断される可能性があります。一方でロシアは、この状況を受けて自国の石油をより高く売れるようになりました。中東からの供給が減るぶん、ロシア産原油の相対的な価値が上がるからです。「静かな受益者」という言葉が出てくるのはそのためです。
新興国
インドはこの状況で特殊な立ち位置にあります。これまでイランの原油を例外的に輸入し続けられる特別な許可を受けてきましたが、封鎖が本格化すればその例外が終わる可能性があります。東南アジアなど他の新興国でも、エネルギーコストの上昇によって物価の圧力がさらに強まっている状況です。新興国ファンドをNISAにお持ちの方は、この物価圧力が各国の企業業績に反映されていく過程を見守る必要があります。
NISAと生活費に届くまでの道筋
ホルムズ海峡がふさがれていると、その中にいる原油を積んだタンカーが外に出られません。タンカーが出られなければ、世界市場に出回る石油の量が減ります。物が不足すれば値段が上がるのは、石油も同じです。国際的な原油価格が上がっていきます。
日本はエネルギーをほぼ全量、外国から買ってこなければならない構造のため、原油価格が上がると日本が支払う輸入コストがすぐに増えます。その負担はまず電力会社とガス会社にのしかかります。発電所を動かすには燃料が必要で、その燃料代が高くなったからです。電力会社は上がった燃料費をそのまま抱えることができないため、毎月の電気代の請求書に「燃料費調整額」という形で利用者に転嫁します。毎月払う電気代が少しずつ上がっているのは、まさにこの経路によるものです。
電気代だけではありません。工場も、コンビニも、スーパーも電気を使います。エネルギーコストが上がれば、ものをつくるコスト、運ぶコスト、お店を運営するコストがすべて上がります。そのコストは最終的に商品の値段に転嫁されます。スーパーで買う食用油、パン、冷凍食品の値段が上がるのです。こうして消費者物価全体が上がり始めます。
物価が上がり続けると、日本銀行が動きます。日本銀行の役割のひとつが、物価を安定させることだからです。金利を上げると、お金を借りるコストが高くなり、消費や投資が抑えられ、物価の上がり方が緩やかになります。いまの市場では、日本銀行がさらに金利を引き上げるかもしれないという見方が強まっています。
金利が上がると、日本円への関心が高まります。金利の高い国の通貨を持っていれば、それだけ多くの利息を受け取れるため、世界のお金が少しずつ円に集まってきます。円を買おうとする需要が増えると、円の値段が上がります。
円の値段が上がると、NISAでこれから米国株を買う方には有利に働きます。同じドル分の株を買うのに、より少ない円で済むからです。ただし、すでに米国株をNISAに入れている方には逆に作用します。ドルで利益が出ていても、それを円に換算すると金額が減ってしまうからです。NISAの画面の数字が下がって見える理由がここにあります。
逆方向も合わせて頭に入れておくと役立ちます。ホルムズ再交渉がまとまって海峡が再び開かれれば、ここまで説明してきた流れがすべて逆に動きます。原油の値段が下がり、電気代の負担が減り、物価の上がり方が落ち着いてきます。そうなれば日本銀行が金利を引き上げる根拠が弱まり、円の値段も再び下がってくる可能性があります。円安になれば、すでにNISAに米国株を持っている方の円換算の評価額が上がります。画面の数字がまた高くなるのです。
8日後に向けた3つのシナリオ

4月22日、いまの休戦期間が終わります。それまで残り8日です。断言はできませんが、これまでの流れを見ると、3つの方向のどれかに進む可能性が高いと考えられます。
シナリオA — ホルムズ再交渉がまとまる場合:アメリカとイランが4月22日より前に再び交渉テーブルに着き、新たな合意を生み出した場合です。ホルムズ海峡が少しずつ再び開かれ、原油価格が1バレル80〜90ドル台まで下がってくる可能性があります。日本のエネルギー輸入コストが軽くなり、日経平均は現在の水準を保つか、さらに上がる余地が生まれます。NISAの日本株の評価額が安定する方向です。
シナリオB — 交渉が再び決裂し、封鎖が長引く場合:再交渉が失敗し、4月22日以降も封鎖が続く場合です。原油価格が1バレル110〜120ドル台まで再び上がる可能性があります。日本の物価上昇圧力が強まり、日経平均が5万6000円を再び割り込む可能性があります。NISAの日本株の評価額が縮む方向です。
シナリオC — TACOパターンが繰り返される場合:4月22日の直前、トランプ大統領がまたもや劇的な土壇場での方針転換を行う場合です。軍事衝突は避けられるものの、封鎖が完全に解除されるわけでもない中途半端な状態が続きます。原油価格は95〜100ドル台を行き来し、市場は短期的な急騰と下落を繰り返す不安定な展開になる可能性があります。
今朝の日経平均が+5%上がったのは、市場がシナリオAかCの方向に傾いているサインです。ただ、8日後にどうなるかは、誰にも断言できません。
この記事で覚えておきたいこと、ひとつだけ
今朝NISAのアプリを開いたとき、画面に浮かんでいた+5%という数字。それがこの記事の出発点でした。封鎖が始まったのに、なぜ市場が上がったのか。少しだけ輪郭が見えてきたなら幸いです。
ひとつだけ覚えておいてほしいことがあります。ホルムズ海峡が開くか閉じるかは、毎月払う電気代、スーパーで手に取る食用油の値段、NISAの口座の数字に、ひとつずつつながっています。34キロメートルの海の道の話ではありません。
8日後、どのシナリオが現実になったとき、あなたはNISAをどう見ていたいですか。
ホルムズ海峡が封鎖されたのに、なぜ株価は上がったのですか?
市場では「TACOパターン」という見方が広まっています。トランプ大統領がこれまで強硬な発言をしては土壇場で態度を変えてきたため、今回も最終的に交渉で落ち着くと予想する投資家が多く、封鎖の翌日にホルムズ再交渉の可能性が伝わったことで株価が反発しました。
ホルムズ再交渉がうまくいけば、NISAにどんな影響がありますか?
再交渉が成功して原油価格が落ち着けば、日本のエネルギーコストが下がり、物価上昇の圧力が和らぎます。日経平均が安定しやすくなるため、日本株をNISAに入れている方にはプラスに働く可能性があります。ただし円安が進む場合は、米国株のNISA評価額が円換算で上がる効果も出てきます。
4月22日の休戦期限が終わったらどうなりますか?
現時点では3つの方向性が考えられます。再交渉で新たな合意が生まれる場合、交渉が再び決裂して封鎖が長引く場合、そしてトランプ大統領が土壇場で方針転換するTACOパターンが繰り返される場合です。どれになるかによって原油価格や日経平均の動き方が大きく変わります。
日本の長期金利が29年ぶりの高水準というのは、なぜ問題なのですか?
長期金利が上がると、国や企業がお金を借りるコストが増えます。住宅ローンの変動金利に影響が出ることもあります。NISAで債券型の投資信託を保有している方は、評価額が下がる場面が出てくる可能性があります。