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イランが火をつけたインフレ3.3%――2つのシナリオとNISAへの影響

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昨日の予告編で「3月の米消費者物価指数(CPI)が何パーセントになるかによって、三つのシナリオを一緒に考えてみましょう」とお伝えしました。その結果が、ついに出ました。米国時間4月10日午前8時30分、3月のインフレ(物価上昇)の公式な数字が発表されました。インフレを測る指標である消費者物価指数(CPI)は前年比3.3%の上昇を記録しました。予告編で想定していた「第2のシナリオ」、つまり「予想の範囲内に収まった場合」に当てはまる結果でした。

今日は、インフレ3.3%という数字が何を意味するのか、世界各国の反応はどうだったのか、そして今後2週間の休戦交渉が終戦に終わるのか再び戦火に戻るのかによってインフレがどちらの方向に向かい、NISAにどのような影響が及ぶのかを、順を追って説明していきます。

イランが火をつけたインフレ――3.3%の中身を読む

3月のアメリカのインフレは、前年比3.3%でした。2月は2.4%でしたから、1か月で0.9ポイントも跳ね上がったことになります。2024年4月以来、最も高いインフレの数字で、月次ベースでの0.9%上昇は4年ぶりの最大幅です。

今回のインフレ3.3%の原因は、エネルギー、ただ一つです。エネルギー価格が1か月で10.9%上がりました。なかでも車に入れるガソリン価格が21.2%跳ね上がりました。1967年以来、1か月のあいだにガソリン価格がこれほど上がったことは一度もなかった、という意味です。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃で始まった戦争が、中東の原油供給を止めたことで生まれたインフレです。

「インフレ3.3%は、すべて悪いニュースなのですか?」と感じた方もいるかもしれません。そうではありません。インフレ3.3%というヘッドラインの数字の中には、まったく異なる二つの話が混在しています。一つは、エネルギー価格10.9%上昇が引き上げたヘッドラインのインフレ3.3%。もう一つは、食品とエネルギーを除いたコア物価指数(コアインフレ)が、1か月のあいだに0.2%の上昇にとどまったという事実です。コアインフレ0.2%は専門家の予想を下回る数値で、年率では2.6%です。エネルギーを取り除いてみれば、3月のアメリカのインフレ圧力は落ち着いていたということになります。卵の価格は1か月でさらに3.4%下がり、過去1年間では実に44.7%も下落しました。食料品全体もほぼ横ばいでした。

インフレは「エネルギーだけ」だったから、市場は安心した

インフレを象徴する原油急騰の瞬間を描いた、アメリカと中東のCountryballキャラクターによる緊張場面。
原油価格の急変は、数字以上に市場心理を揺らします。今回のインフレがどこから来たのかを一目で示す場面です。

ヘッドラインのインフレ3.3%とコアインフレ0.2%という二つの数字を見て、市場がどう反応したかをお伝えします。

ハイテク株中心のナスダック指数と幅広い企業を含むS&P500指数は、この日わずかに上昇しました。一方、製造業や輸送業の企業が多いダウ・ジョーンズ工業平均は下落しました。エネルギー株は大きく上がり、航空会社の株は大きく下がりました。ガソリン価格21.2%上昇が、航空会社の燃料コストを直撃したからです。

ナスダックとS&P500がパニックにならなかった理由は、コアインフレ0.2%にあります。米国の中央銀行(Fed)は金利を決める際、エネルギーや食品のように価格が上下しやすい項目よりも、コアインフレをより重視します。コアインフレが0.2%と落ち着いていれば、急いで金利を上げる理由がありません。市場は「今回のインフレ3.3%はイラン戦争という外部の衝撃によるものであって、アメリカ経済そのものが過熱しているわけではない」と読んだのです。

ただし、完全に良いニュースばかりというわけでもありません。インフレが3.3%まで上がったことで、金利を下げるだろうという期待はさらに先送りされました。年初に投資家は「今夏あたりに金利が下がるのではないか」と期待していました。インフレ3.3%が出た今、その期待は今年10月から12月へと後退しました。現在の政策金利である3.5〜3.75%がそのまま維持される状態は、5月の会合でも続くことがほぼ確実になりました。

6つの視点 — 同じインフレを、世界はどう読んだか

インフレへの世界の反応を示す、アメリカ・日本・ヨーロッパのCountryballキャラクター比較シーン。
同じインフレでも、見る立場によって意味は変わります。通貨、金利、生活コストがそれぞれ異なる形で動くことを象徴しています。

アメリカ

アメリカ国内でも、インフレ3.3%に対する受け止め方は分かれました。エネルギー会社はガソリン21.2%上昇の恩恵を受け業績が改善しました。一方、燃料コストが直接かかる航空会社や運送業は打撃を受けています。Fedの関係者は「ヘッドラインのインフレ3.3%は懸念されるが、コアインフレ0.2%の長期的な流れを見る」というスタンスを維持しています。現在の政策金利3.5〜3.75%が維持されれば、ドルは強いままです。ドルが強ければ、NISAでアメリカ株を買う際に、より多くの円が必要になります。

ヨーロッパ

ヨーロッパも、エネルギーのほぼすべてを外国から買わなければならない構造です。アメリカのインフレを3.3%まで押し上げたガソリン21.2%高騰は、ヨーロッパのエネルギー市場にも同じ方向でインフレ圧力をかけています。欧州中央銀行(ECB)は最近、物価が比較的落ち着いていることから金利を下げる方向に動いていました。アメリカがインフレ3.3%で3.5〜3.75%を維持し、ヨーロッパが金利を下げる方向になれば、ドルはさらに強くなりユーロは弱くなります。ヨーロッパ系企業に投資したNISA資産の円換算の収益率にも影響が出てくる可能性があります。

日本

日本は今、非常に複雑な状況に置かれています。日本に入ってくる原油と天然ガスの75%がホルムズ海峡を通過します。アメリカのインフレを3.3%まで引き上げたガソリン21.2%上昇は、エネルギー依存度がアメリカよりはるかに高い日本では、より強いインフレ圧力として伝わります。同時に、円の価値は現在1ドル159円近くまで下がっています。円安になると、輸入エネルギーのコストがさらに増えます。日本銀行(BOJ)は現在、政策金利を0.75%に据え置いており、次の会合は4月27〜28日です。日本銀行が0.75%から金利を引き上げると日本人の生活にどんな変化が起きるかは、後ほど別のセクションで詳しくお伝えします。

韓国

韓国もエネルギーのほぼすべてを輸入に頼る国です。ガソリン21.2%高騰とドル高が重なれば、ウォンの価値にも圧力がかかります。韓国銀行も、アメリカのインフレ3.3%という数字を見ながら次の金利決定をしなければならない状況です。

中国

中国は、今回のインフレ衝撃を比較的受けにくい立場にあります。イランから独自のルートで原油を輸入する仕組みがあるため、ガソリン21.2%高騰の直撃を受けにくい構造です。ただし、中国国内のインフレはむしろ上がらないことが心配な状態です。消費者がお金を使わないために物価が上がらないのは、景気が良くないというサインです。中国の内需の低迷が続けば、日本の輸出企業の業績に影響が及び、最終的に日本株に投資したNISA資産とも関係が出てきます。

新興国

インドやブラジルなどの新興国は、ガソリン21.2%高騰とドル高という二重のインフレ圧力を同時に受けています。エネルギーを輸入しなければならない国では、21.2%上がった燃料費が直接、生活費のインフレにつながります。さらに、米政策金利3.5〜3.75%が維持されてドルが強いままになると、新興国の通貨の価値が相対的に下がります。NISAで新興国ファンドをお持ちの方は、この流れを頭に入れておく必要があります。

経済のつながり — インフレ3.3%が、あなたのNISAに届くまで

インフレ3.3%がどのような経路をたどってNISAに届くのか、一段階ずつ追っていきます。

アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃で、中東の原油供給が止まりました。供給が減るとガソリン価格が21.2%跳ね上がりました。ガソリン価格が21.2%上がると、アメリカの消費者の毎月の生活費が増えました。生活費の増加が積み重なって、3月のアメリカのインフレが3.3%として現れました。インフレが3.3%まで上がると、米国の中央銀行は現在の政策金利3.5〜3.75%を下げにくくなりました。政策金利3.5〜3.75%が維持されると、ドルは強いままです。ドルが強ければ、円は現在の1ドル=159円の水準からさらに弱くなる可能性があります。円がさらに弱くなれば、NISAでアメリカ株を買う際に、今より多くの円が必要になります。

一つ良いニュースもあります。コアインフレが0.2%と落ち着いていたため、ナスダックとS&P500が大きく崩れませんでした。NISAでアメリカ株を保有されている方にとっては、「現在の株価水準が維持されている」というサインです。

休戦の今、インフレはどこへ向かう? — 2つのシナリオ

この記事を書いている時点で、アメリカとイランのあいだの休戦は4月8日から発効しています。ただし、この休戦は2週間の交渉期間を前提にした暫定合意です。2週間後の交渉結果によって、現在1バレル約110ドルで推移している国際原油価格、インフレの方向、NISAを取り巻く環境が大きく変わる可能性があります。核心は一つです。「インフレ3.3%を引き上げた1バレル110ドルの原油価格が下がるのか、それとも再び上がるのか」です。

シナリオA — 休戦が定着し、終戦へ(ホルムズ通行料という新たな問題)

交渉が成功して休戦が終戦につながる場合です。ただし、このシナリオが「インフレがすぐに正常化される」という意味ではないことを最初にお伝えしておきます。今の交渉の核心的な争点の一つが、ホルムズ海峡の通行料問題だからです。

イランはすでに戦争中から、自国の海域を通過する船舶に通行料を徴収し始めています。船舶1隻につき約100万〜200万ドル、または原油1バレル当たり1ドルを暗号通貨で要求する仕組みです。トランプ大統領は当初「イランが通行料を取っているなら今すぐ止めなければならない」と警告していましたが、間もなくアメリカとイランが共同で通行料を徴収する案について「美しいことだ(a beautiful thing)」と表現しました。これに対してイギリスは「国際法違反だ」として反対の立場を示しています。

戦前、ホルムズ海峡を1日に通過する船舶は100〜120隻でした。この通行料が終戦後も維持されれば、そのコストは最終的に原油輸入国のエネルギー価格に上乗せされます。終戦になっても、インフレを引き起こしたエネルギー価格が1バレル80ドル以下に完全に戻りにくい状況が続くかもしれません。アメリカのインフレが3.3%から2%台へ早期に下がるペースは、予想より遅くなる可能性があります。

シナリオB — 交渉決裂、再び戦火へ(中国・ロシアという隠れた変数)

交渉が決裂して戦争が再開される場合です。このシナリオでインフレに最も大きな影響を与える変数は、中国とロシアがイランへの支援をどこまで拡大するかです。

中国とロシアがイランを陰で支援しているという実態は、すでに複数の研究機関や報道機関が確認しています。ロシアはアメリカの軍艦や航空機のリアルタイムの位置情報をイランに提供しています。ロシアが保有する軍事衛星システム(リアナ)を通じて、米空母や戦闘機の移動ルートがイラン側に伝えられているというのが専門家の分析です。中国はミサイル部品、レーダーシステム、衛星航法技術(北斗)をイランに事前提供してきました。

ただし、専門家たちは重要な違いを強調します。ロシアも中国も、イランへの直接的な軍事介入はしていないという点です。ロシアはインフレを押し上げる高油価がウクライナ戦争の資金を賄っているため、イランを救うことよりも戦争が続く状態に利害関係があります。中国の最優先課題はトランプとの貿易戦争を避けることであるため、イランのためにアメリカと直接ぶつかる選択は避けています。

戦争長期化の可能性について、専門家たちはやや懐疑的に見ています。イランの弾道ミサイル発射能力は、開戦直後の1日250発から、わずか10日で1日10〜50発の水準まで90%以上激減しました。もし交渉が決裂し、中国・ロシアがイランへの直接的な武器支援を決断すれば、戦争は単純な米イラン衝突を超え、インフレも別次元の問題になります。1バレルの原油価格が120ドルを超えて150ドルまで上昇するというシナリオも一部の専門家が提示しています。

経済的な影響に戻ると、戦争が再開されればインフレ3.3%は4月・5月にさらに高い数字になる可能性が高まります。一部の専門家は5〜6月のインフレが年率ベースで3.6%以上に達しうると見ています。インフレが3.6%以上になれば、現在3.5〜3.75%の政策金利をむしろ引き上げなければならないという圧力が、米国の中央銀行にかかる可能性があります。金利を上げるというシグナルが出れば、ドルは今よりさらに強くなり、現在1ドル=159円の円は160円、165円とさらに弱くなりかねません。インフレは上がるのに景気が悪くなる最悪の状態、つまり物価は上がるのに景気は悪くなるという状況(スタグフレーション)への懸念が広がるでしょう。この場合、NISA資産全体に下押し圧力が生じる可能性があります。

日本銀行が金利を上げると、日本人の生活はどう変わるか

前に挙げた二つのシナリオがどちらも、最終的に日本銀行の4月27〜28日の会合へとつながっています。アメリカのインフレ3.3%という数字は、日本の金利決定にも影響します。

日本銀行が現在の0.75%から金利を引き上げると、日本人の生活にどんな変化が生まれるでしょうか。

最初に影響を受けるのは住宅ローンです。日本の家計の約70%が変動金利で家を購入しています。金利が0.25ポイント上がれば、3,000万円の住宅ローンを組んでいる家庭では、毎年数十万円規模の利払い負担が増えることになります。30年近く金利がほぼ0%だった時代に家を買った方々にとって、これは初めて経験する変化です。企業も同じです。銀行から借り入れをして事業を運営している中小企業は、調達コストが増えれば投資を控えるようになります。投資が減れば、雇用や賃金にも波及します。

一方で、良い面もあります。30年近く預金金利がほぼ0%だった日本で、コツコツ貯蓄してきた方々は、ようやく利息収入が生まれ始めます。また、金利が上がると円の価値が上昇する傾向があります。現在1ドル=159円の円が強くなれば、輸入品の価格が下がり、インフレ圧力が和らぐ可能性があります。NISAの観点では、円高になるほどドル建てのアメリカ株資産の円換算の評価額は目減りします。プラスとマイナスが同時に動く構造です。

注意が必要な点もあります。日本の国の借金はGDP比で約230%と、世界で最も高い水準です。金利が上がれば、国が毎年支払う利息の負担も増えます。今年1月には日本の40年物国債の利回りが2007年以来初めて4%を超え、グローバルの債券市場が大きく揺れた出来事がありました。これが、日本銀行がインフレを抑えたくても非常に慎重に動かざるをえない理由です。

次に見るべきことは何か

カレンダーに印をつけておいていただきたい日程が二つあります。一つ目は4月27〜28日の日本銀行の会合です。日本銀行が現在0.75%の金利を引き上げれば、円が強くなりインフレ圧力が和らぐ可能性がある一方、変動金利ローンを抱える方々の負担が増え、日経平均にも下押し圧力が生じる可能性があります。二つ目は5月1日の米国の中央銀行の会合です。現在の3.5〜3.75%の政策金利が維持されることはほぼ確実ですが、その後のインフレ見通しと金利の方向性についてどんなシグナルを出すかが重要です。そしてこれらすべての前提となるのは、2週間のイラン休戦交渉がどう展開するか、ホルムズ海峡の通行料問題がどう決着するか、そして中国・ロシアがイランへの支援水準をどこまで高めるかです。

この記事で覚えておきたいこと、ひとつだけ

3月のアメリカのインフレは3.3%でしたが、ガソリン価格21.2%という一項目が引き上げたものでした。ガソリンを除いたコアインフレは0.2%と落ち着いていました。だからナスダックとS&P500はパニックにならなかったのです。今は4月8日から発効した休戦中です。終戦になったとしても、ホルムズ通行料の問題が残っているため、インフレの完全な正常化は不確かです。交渉が決裂して戦争が再開されれば、中国・ロシアの支援水準次第で、インフレ3.6%以上、1バレル120ドル以上の原油価格、160円以上の円安という方向に進むリスクがあります。

この記事の最初に戻ります。3月のインフレ3.3%は、予告編で想定していた第2のシナリオでした。予想の範囲内でしたが、ヘッドラインのインフレ3.3%とコアインフレ0.2%という、まったく異なる二つの数字がその中に混在していました。そして来月のインフレが3.3%より上がるか下がるかは、今イスラマバードで進んでいる交渉の場で、そしてモスクワと北京の判断に、かかっています。

3月のアメリカのインフレ(物価上昇率)は何パーセントでしたか?

前年比3.3%の上昇でした。2024年4月以来、最も高いインフレの水準です。ただし、食品とエネルギーを除いたコアインフレは0.2%にとどまり、予想を下回りました。

インフレが3.3%に上がっても、株式市場がパニックにならなかったのはなぜですか?

インフレ3.3%のほぼすべてが、ガソリン価格21.2%という一項目によるものだったからです。コアインフレは0.2%と落ち着いており、市場はこれをイラン戦争という外部要因とみなし、アメリカ経済の根本的な過熱ではないと判断しました。

ホルムズ海峡の通行料とは何ですか?インフレとどう関係しますか?

イランが戦争中から自国の海域を通る船舶に対して徴収し始めた料金です。船舶1隻あたり約100万〜200万ドル規模とされています。この通行料が終戦後も維持されれば、エネルギー輸送コストが下がりにくくなり、インフレを引き起こした原油価格が戦前の水準に完全には戻らない可能性があります。インフレが高止まりすれば金利も下がりにくく、NISAの環境に影響が続く可能性があります。

日本銀行が金利を上げると、インフレや私のNISAにはどんな影響がありますか?

金利が上がると円が強くなる傾向があるため、輸入エネルギーのコストが下がりインフレ圧力が和らぐ可能性があります。ただし、円高になるほどドル建てのアメリカ株資産の円換算の評価額は目減りします。また、日経平均にも下押し圧力がかかりやすくなります。プラスとマイナスが同時に動く構造であることを頭に入れておくことが大切です。

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